2001年10月26日

9. 殴り込み-1

ちょっと大袈裟なタイトルでしたね・・まっ、ちょっとした殴り込みです。

高校生の時、日本橋の喫茶スナックでアルバイトをしてたんです。
前回のそば屋のすぐ近くなんですよ。
よく出前に行ってたんですけど、ある日、店のマスターに誘われてね。
時給に釣られて、転職しました。
昼間は喫茶店、夜はスナック、ということで喫茶スナックなんです。
小さな店でね。客席は全部で20席ぐらいかな。
昼間は一応学校に行ってたんで、僕は主にスナックのバーテンをしていました。
おさるの小説の舞台にもなった店なんですよ。小説ではこの話はカットされましたけどね。

その日は偶々みんな用事があって、夕方から僕一人で店を仕切ることになったんです。

6時頃、店には4〜5人のごく普通のお客さんがいて、コーヒーを飲んでいました。
そこへ、やくざ風の3人連れが入って来たんです。
店の近くには、組事務所がたくさんあるので、そういうお客も珍しくはないんですよ。
ただその内の一人が、頭から血を流してるんです。
『あれっ、どうしたの・・大丈夫?』とか思いながら、水を出そうとしたら・・・。
作業服姿の男の人達が8人ぐらい、つるはしやスコップを振りかざし、すごく興奮した面持ちで、『オリャッー!』とか『アギャッー!』とか何か意味の判らないことを喚きながら、店にドカドカ入ってくるんです。

あっと言う間に、4〜5人の普通のお客さん達は店をでましたね。
どうしようか・・一瞬迷ったんですけどね。律儀だったあの頃の僕は、追いかけて集金させていただきました。可哀想に、みんな無言のまま慌ててお金を払うと、逃げるようにどこかに行ってしまいました。二度と店には来てくれなかったですね。

店に戻ると、睨みあいの真っ最中。
横をすり抜け店の奥に行き、どうするべきか考えました。
お水を出すべきか、出さざるべきか・・で、しばらく様子を見ることにしましたよ。
めったに見れるもんじゃないしね。
ただ、トイレのそばにはいましたよ。乱闘になったら逃げ込もうと思って・・。

2001年10月29日

9. 殴り込み-2

15分ぐらい睨みあいが続いたでしょうか・・
殴り込みの人たちは、つるはしやスコップを振り上げたまま、すごい形相で3人を威嚇してるんです。
3人は椅子に座っているんですけど、落ち着きがなく腰が引けているような感じでした。
双方、話をするわけでもなく、じっと睨みあってるんです。
やがて、近所の組事務所の若頭風の人が、若い衆を二人連れて店に入って来ました。
そういうお約束だったんでしょうね。
この若頭風の人は、時々店に来ていたので僕もよく知っていたんですよ。
さすがと言うか何と言うか、張り詰めていた空気が、急に和らぎました。
きっと、どちらもホッとしたんでしょうね。
『そんなもん振り上げて、突っ立っとたら話もでけへん・・まぁ、座ったらええがな・・』
というような感じで、まず皆を座らせました。
頼まれて、仲裁に来たという感じでしたね。

その時、店の電話が鳴ったんです。
『ジロッ』っと、みんなの視線が僕に集まりました。
電話を取ると、いつも店に配達に来る氷屋のにいちゃん。
『大丈夫か・・警察呼ぼか・・みんな、外で見とったんやけど、どんな感じや・・』
ドアのガラス越しに外を見ると、店の前の道路の向こう側から、モータープールのおっちゃんやくだもの屋のおっちゃん、その他ざっと20人ぐらいの人たちが、こちらの様子を伺っていましいた。
僕は小声で、『うん、もう大丈夫やと思うわ・・』
『そうか・・なんかあったらとりあえず、逃げなあかんで・・ほな、外で見てるし・・』
いつも無口な氷屋のにいちゃんにしては、よく喋った。

電話を切ると、サッとみんなの顔が元に戻り、話し合いが再開された。
律儀だったその頃の僕は、みんなに水を配り、『何しましょ』と、注文を聞いたが、無視されてしまいました。
ワンテンポ遅れて、若頭風の人が『ミルク貰おうか』って。

『まあ、ええか・・ミルク1杯でも、これだけ店に迷惑をかけたわけやし、なんぼか置いていってくれるやろ・・10万ぐらいポーンと置いていくんかなぁ・・まっ、最低でも1万円は・・』
そんなことをボーと考えていました。

で、いつの間にか話し合いが終わり、みんなゾロゾロと店を出ていくんですよ。僕に挨拶もなしに。
『あのー・・お金を・・』って言うと、若頭風の人が『あっ、ごめん、なんぼや・・』って。
小銭入れからちょうど250円出して『迷惑かけたな』だと・・。
『しょぼい奴やなぁー・・そんなこっちゃ大物にはなられへんぞ〜〜〜!』僕は心の中で叫びました。

その時の教訓
1. そのしょぼさが、身を滅ぼす・・
2. 無口な氷屋のにいちゃんも、たまにはよく喋る。

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