15分ぐらい睨みあいが続いたでしょうか・・
殴り込みの人たちは、つるはしやスコップを振り上げたまま、すごい形相で3人を威嚇してるんです。
3人は椅子に座っているんですけど、落ち着きがなく腰が引けているような感じでした。
双方、話をするわけでもなく、じっと睨みあってるんです。
やがて、近所の組事務所の若頭風の人が、若い衆を二人連れて店に入って来ました。
そういうお約束だったんでしょうね。
この若頭風の人は、時々店に来ていたので僕もよく知っていたんですよ。
さすがと言うか何と言うか、張り詰めていた空気が、急に和らぎました。
きっと、どちらもホッとしたんでしょうね。
『そんなもん振り上げて、突っ立っとたら話もでけへん・・まぁ、座ったらええがな・・』
というような感じで、まず皆を座らせました。
頼まれて、仲裁に来たという感じでしたね。
その時、店の電話が鳴ったんです。
『ジロッ』っと、みんなの視線が僕に集まりました。
電話を取ると、いつも店に配達に来る氷屋のにいちゃん。
『大丈夫か・・警察呼ぼか・・みんな、外で見とったんやけど、どんな感じや・・』
ドアのガラス越しに外を見ると、店の前の道路の向こう側から、モータープールのおっちゃんやくだもの屋のおっちゃん、その他ざっと20人ぐらいの人たちが、こちらの様子を伺っていましいた。
僕は小声で、『うん、もう大丈夫やと思うわ・・』
『そうか・・なんかあったらとりあえず、逃げなあかんで・・ほな、外で見てるし・・』
いつも無口な氷屋のにいちゃんにしては、よく喋った。
電話を切ると、サッとみんなの顔が元に戻り、話し合いが再開された。
律儀だったその頃の僕は、みんなに水を配り、『何しましょ』と、注文を聞いたが、無視されてしまいました。
ワンテンポ遅れて、若頭風の人が『ミルク貰おうか』って。
『まあ、ええか・・ミルク1杯でも、これだけ店に迷惑をかけたわけやし、なんぼか置いていってくれるやろ・・10万ぐらいポーンと置いていくんかなぁ・・まっ、最低でも1万円は・・』
そんなことをボーと考えていました。
で、いつの間にか話し合いが終わり、みんなゾロゾロと店を出ていくんですよ。僕に挨拶もなしに。
『あのー・・お金を・・』って言うと、若頭風の人が『あっ、ごめん、なんぼや・・』って。
小銭入れからちょうど250円出して『迷惑かけたな』だと・・。
『しょぼい奴やなぁー・・そんなこっちゃ大物にはなられへんぞ〜〜〜!』僕は心の中で叫びました。
その時の教訓
1. そのしょぼさが、身を滅ぼす・・
2. 無口な氷屋のにいちゃんも、たまにはよく喋る。
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