2002年5月13日

21 小さな火事

梅田から阪神電車に乗った時のことです。
始発駅で昼間ってこともあり、車内はガラガラでした。
発車までの時間待ちで、電車はドアを開けたままで止まっているんです。
僕はドアの近くに座ってたんですが、しばらくすると黒いサングラスにジーズンの、かなり松田優作を意識した30才ぐらいの男性が、足でタバコを揉み消しながら車内に入ってきました。
男性は僕の向い側に股を大きく広げ、腕を組んで座りました。
僕の横には少し離れて20才ぐらいの学生風の真面目そうな女性がいて、男性の横には、やはり少し離れて50才位のおばさんが座っていました。
車両には他に10人ぐらいが乗っていたでしょうか。

何か、こげる臭いがしたんです。
『ん?何の臭い?』と車内を見渡しましたが、特に異常はないようで、誰も臭いには気付いてないようでした。
僕は気のせいかなぁと思ったんですが、今度は僕の横に座っていた女性がキョロキョロし始めたんです。
「なんか焦げてるような感じですねぇ」僕がそういうと、女性も「ええ、そうですね・・」と言いながら、二人は臭いの元を目で探しました。
だんだん、車両の他の人たちも臭いに気づきだしたようで、みんなキョロキョロしています。
ただ向いのサングラスの男性だけは、素知らぬ顔で腕を組み黙って座っていました。
『男は些細なことで動じちゃいけないよ』そう言っているような態度でしたね。

だんだん臭いが強くなり、こりゃただごとじゃないな、と思い始めた頃です。
横の女性が少し驚いた顔で一点を見つめているんです。
僕は素早く彼女の視線の先を目で追いました。
たしかに燃えています。
突然、サングラスの男性が「ワァツッー!!」と叫び、あわてて立ち上がりました。
男性のジーンズの踵側の裾から火は燃え広がり、ふくらはぎの中程ぐらいで半円を描くように燃えているんです。
コゲるって生易しいものじゃなくて、ホントに火が見えるほど勢いよく燃えているんです。
男性は必死で火を揉み消しながら電車を降りると、どこかに行ってしまいました。
半円から見える靴の、やけに高いかかとが印象的でした。
僕は横の女性と目を合わせ、少しだけ笑ってしまいましたよ。

その時の教訓
1. カッコつけるもたいへんですよね。
2. ポケットからさり気なくミニ消化器をとりだし、シュッと火を消して、女の子にウインクでもしてくれたら、拍手の一つもしてあげるんだけど・・。

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